脊椎圧迫骨折の新治療-バルーン・カイフォプラスティ-

診療・各部門

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脊椎圧迫骨折に新手術

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 手術前、強い腰痛のために起き上がったり、歩くのもままならない状態だった患者さんが、手術の翌日には『全く痛くなくなった!』と笑顔をみせてくれる。今回はそんな魔法のような手術を紹介します。
 転倒などで背骨がつぶれたように折れてしまう脊椎圧迫骨折。骨粗鬆症の患者に多く、閉経後の女性を中心に国内では、推計で年間90 万人近くの骨折が起こっているといわれております。圧迫骨折は基本的には、手術をしなくても徐々に腰痛が治まる骨折とされておりますが、稀に骨折した椎体が偽関節化(くっつかない)し、腰痛が残ることがあります。こういった難治性の圧迫骨折に対し、痛みをすぐに緩和できる新しい手術法が平成23年1月に保険適用となりました。

つぶれた椎体に風船で空間。セメント詰めて、補強・復元

 手術は、経皮的後弯矯正術(バルーン・カイフォプラスティ= BKP)と呼ばれます。山陰地方でこの手術の施設基準を獲得した病院は数少なく、当院は平成24年4月に導入しました。
 全身麻酔した患者さんをうつぶせに寝かせ、骨の内部をエックス線の画像で確認しながら、直径約5 ミリの管状の器具を背中の左右2か所から骨がつぶれた部分に差し込みます。幹部に器具が到達すると、先端のバルーン(風船)を膨らませて、骨をつぶれた状態からもとに戻します。バルーンを抜いた空間に特殊な樹脂でできた粘性の高いセメントを少しずつ注入すると、セメントが固まりだし、骨折前に近い形で骨折した椎体が復元されます。元々椎体が不安定になっていることで生じる腰痛は、椎体が固まることで手術直後から緩和します。

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手術平均45分、手術直後に痛みが無くなる。

 手術時間は平均45分。傷痕も1 センチほどで縫うほどの大きさではありません。、術後に隣接する上下の腰椎の圧迫骨折を引き起こした例が、1~2 割余りみられるなどの課題も残りますが、当院では、術後2~3ヶ月間、固いコルセットを着用しており、続発する圧迫骨折を慎重に予防しております。もちろん圧迫骨折の原因となった骨粗鬆症の治療も重要であり、術後にそれぞれの患者さんに最適な薬を選択します。

注意点

 ここで注意していただきたいのは、新しい治療であるため、厳密な手術の適応があり、全ての圧迫骨折の患者さんに行えるわけではないということです。すでに圧迫骨折を起こした椎体が2個まで、とされており3個以上の骨折がある患者さんには適応がありません。また、腰痛が発生して間もない患者さんには適応がなく、8週以上経過した時点で強い腰痛が残る場合を適応としており、実際に圧迫骨折になった患者さんの内、手術が必要となるのは10人中1人以下です。

今後の展望

 これまで圧迫骨折の偽関節の手術は、骨折している骨を上下の骨と金属を用いて固定する脊椎固定術が中心であり、長時間の手術と大変なリハビリが必要でした。その点、セメント治療は、より短時間の手術で安全性が高く、早期に腰痛が治まるため、今後更に広まっていくものと思われます。

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