診療・各部門
スポーツ医学は障害を発症させないための予防医学が基本であることは、古今東西変わっていませんが、いったん何らかの障害が発症した場合、従来は漠然と“少し休んで筋力をつけて再開するように”と指導し、決してメスは入れない傾向にありました。
しかし近年スポーツ整形外科の進歩と低侵襲手術の開発によって、手術で改善するケースも増え、手術後、競技生活に復帰して活躍しているプロフェッショナルアスリートがメディアでも紹介され、スポーツ選手に対しても積極的に手術が行われていることが知られてきました。
当院でも、さまざまなスポーツによって発症する外傷や障害に対して治療を行っており、その一部を紹介します。
診療のご紹介
スポーツによる外傷や障害で外来受診された場合、問診と診察の後、単純X線、MRIやCTなどを含む画像診断が行われ、その後治療方針が決定されます。
発症原因から次の二通りに分類されます。
① スポーツ外傷:1回の外力で発症する骨折・脱臼・靭帯損傷・腱断裂などがあります。代表的疾患として舟状骨骨折をはじめとした手関節周囲の骨折や靭帯損傷、指関節脱臼骨折、肘や膝周囲の靭帯損傷、アキレス腱断裂などがあります。診察・単純X線、必要に応じてCT、MRIが撮影されます。治癒目的だけでなく早期社会復帰や競技復帰のためには保存的治療が優先されるか手術が行われるかが検討されます。
② スポーツ障害:繰り返される軽微な外力によって生じるオーバーユースによるものです。代表的疾患として投球肩障害、野球肘、ジャンパー膝、シンスプリント、疲労骨折などがあります。診断は診察・単純X線に加えMRIやCTが必要です。最近は超音波エコーを用いる施設も増えています。治療は保存的治療から手術まで患者さんのニーズに合わせて検討されます。
次に当院で扱っている,主なスポーツ障害・外傷を部位別に紹介します。
肩関節
投球肩障害:SLAP(肩関節上方関節唇)損傷をはじめとした関節唇損傷やインピンメント障害があります。関節唇は関節の周囲に存在する線維軟骨です。保存的治療で軽快する場合もありますが、内視鏡を用いた関節鏡視下手術が行われる場合があります。
反復性肩関節脱臼:初回肩関節脱臼の後、何度も(2回以上)脱臼を繰り返し、肩関節内の組織が複合的に損傷をきたした結果生じるもので、競技復帰のためには手術が考慮されます。
手術後の競技復帰には早期発見・早期治療と手術後のリハビリテーションが重要です。
肘関節
野球肘:野球肘は離断性骨軟骨炎、内側側副靭帯損傷、肘頭疲労骨折等の総称です。手のしびれを訴える肘部管症候群も野球選手で見られることがあります。早期発見の場合は保存的治療で治癒しますが、多くは手術適応となります。関節鼠摘出術、内側側副靭帯再建術、骨軟骨移植術、神経移行術まで病態に応じて治療法を選択します。
テニス肘:必ずしもテニスをしている人に発症するのではなく、一般の人にも発症します。多くは保存的治療で軽快しますが、手術を行う場合もあります。
手関節
三角線維軟骨複合体損傷(TFCC)損傷:手関節尺側(小指側)の疼痛を訴えられます。内視鏡を用いて切除・縫合が行われます。場合によっては尺骨短縮骨切り術を行います。
舟状骨骨折:手をついて転倒した場合発症します。初期のX線では明らかでないこともあり、MRI・CTが撮影されます。手術による内固定を行う必要があります。
股関節
股関節唇損傷:股関節にも肩関節と同様に関節の周囲に関節唇という軟骨組織があります。まれな病態ですが、この関節唇が損傷されると関節を過度に動かした場合、痛みが生じます。多くは保存的治療で軽快しますが、内視鏡手術で修復術や切除術が行われることがあります。
膝関節
半月板損傷・前十字靭帯損傷・内側側副靭帯損傷:バスケットボールやバレーボール、サッカーなどの活動性の高いスポーツではジャンプや急な方向転換動作によって前十字靭帯断裂が発症します。靭帯損傷単独の場合もありますが、半月板損傷を伴う場合もあります。保存的治療より手術が優先されます。内視鏡を用いて靭帯再建術や半月板切除術もしくは修復術が行われます。
オスグッドシュラッター氏病:身長が伸び盛りの成長期に膝の前が痛みで発症します。多くは一時的なスポーツ制限とストレッチなどにより軽快します。遊離した骨片を手術で切除する場合もあります。
離断性骨軟骨炎:成長期にみられる疾患ですが、放置すると将来的に障害が残ります。早期発見の場合は保存的治療で治癒しますが、多くは手術適応となります。内視鏡による骨穿孔術や骨軟骨移植術が行われます。早期発見と早期治療が必要です。
脊椎
腰椎椎間板ヘルニア:診察とMRIで診断されます。多くは保存的治療で軽快しますが、病態に応じて内視鏡による低侵襲ヘルニア摘出術が行われることがあります。
腰椎分離症:単純X線で診断され、原則として保存的治療が優先されますが、CT・MRIで病気を把握したうえで治療法が選択されます。
手術室
リハビリテーション室
現在46名のスタッフにて年間を通じ365日の休みないリハビリを実施しております。また、リハビリ棟では室内および野外訓練を行うと共に、筋力の強さを客観的に 判定するためにCYBEXや等尺性筋力計μTas(ミュータス)や、各動作の中で関節がどの程度動いているかを測定する TOMOCO(Total Motion Coordinator)等の医療機器を用 いて検査・測定を行い、現在の状態を客観的に把握し、それぞれの患者様に適した効果的なプランに基づいたリハビリを行い、より速い復帰を目指しています。